2013年10月20日日曜日

平家武将それぞれの最後…「能登殿最期」

安徳天皇縁起絵図より
今回の公演の最後の演目は、「能登殿最期」です。
戦のシーンが入っていなかったので、時系列も含め、壇ノ浦あたりで一つ選んでおこうと思ったのですが、このシーン、戦うというより平家の武将達のそれぞれの人生の最後を描いています。その中で、聴く方もあっけにとらわれるのが、大臣殿宗盛親子の往生際の悪さ。うーむ、まるでコントのようですね。。。。
能登守教経は、最後まであきらめずに敵将判官義経を追いますが、さいごはふっつりと全てを捨てて敵を道連れに海へ飛び込むのです。

あらすじです。

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1185年(元暦2)年3月24
 安徳帝の入水に続いてその母である建礼門院徳子も後に続くが、沈みきらないところを源氏方の武士に引き上げられた。
 そのうちに、武将たちが次々と入水する。教盛・経盛兄弟は鎧に碇を背負い手を組んで、資盛・有盛兄弟とその従兄弟の行盛の三人も手を組んで共に海底に沈んだ。
 しかし、平家一門の総帥宗盛父子は呆然と四方を見るばかり。あきれた家臣に海へ突き落とされたが、父子は鎧も身に付けず、泳ぎも達者だったため、互いを気遣いながら泳ぎ回っているところをともに生け捕られた。
 そんな中、諦めずに戦い続けた教経は、用意した矢のありったけ全部を射尽くし、今日が最期と思ったのだろう、赤地の錦の直垂の上に唐綾縅の鎧を着て、大太刀、大長刀を左右の手に持って敵を斬りまくった。これを見た知盛は使者を介して「罪作りなことをするな、よき敵でもあるまい」と伝えた。「ならば大将軍と組めというのだな」と心得て、源氏の大将軍義経を探した。ようやく義経の舟を見つけて飛び移り組みかかろうとするが、さすがの義経もかなわないと思い、舟から舟へ飛び去った。これが後に言われる義経の「八艘飛び」である。
 いよいよこれまでと覚悟を決めた教経は、太刀、長刀を捨て甲も脱いで仁王立ちになり、「我こそと思う者はこの教経と組んで生け捕りにせよ。鎌倉の頼朝に会って一言言うことがある。さあ寄って来い、寄って来い」と叫んだが、寄ってくる者は誰もいなかった。
 三十人力で知られた土佐国の安芸太郎と弟の次郎、同じく大力の郎党が教経に組みかかってきたが、教経は郎党を海へ蹴り落とし、兄弟を両脇に抱えたまま「さあ、貴様らは死出の山の供をしろ」と言って、享年26歳で海に飛び込んだ。

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宗盛が熊手で引き上げられてしまった場面のすぐ後に本当は、宗盛のめのと子の景経が主を取り返そうとものすごい戦いで討たれて、宗盛はどう思ったことやら…というシーンが書かれているのですが、今回は教経に集中していただくためにそこは省略しました。

舞台「子午線の祀り」の小倉公演の時に出演者一同でこの壇ノ浦見物に行きました。赤間神社には建礼門院が熊手で引き上げられる絵があり平家一門の墓は、気のせいか何かが出てきそうな気配でした。

私達もまた、諸行無常の歴史の流れの中で、懸命に己の運命を生きていくのです。

調べればもっとたくさんの歴史的事実や、物語のエピソードがあって面白いのでしょうけど、白状しますと、このユニットは、そんな詳しいことを一つも知らないひとたちばかりです。まず毎回、私が選んだ章段の原文を読み、そこからびびびっとインスピレーションをうけてこの舞台を作っています。つまり、そう、例えなにも知らなくても「平家物語」は面白い素材なのです。

どうぞ、そんな人たちが作っているんだと、安心して劇場でご覧になって下さい。
語りであり語りでない美しい舞台でお待ちしております。

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古典の言葉が躍動する!分かる!美しく衝撃的な舞台!
語り:金子あい × 波紋音:永田砂知子
「平家物語」第4回公演

【日時】10月22日(火) 19時開演
    10月23日(水)14時開演 / 19時開演 ※開場は開演の30分前
【上演演目】祇園精舎、鵼、奈良炎上、維盛都落、能登殿最期 (上演時間80分)

【出演】語り・金子あい、波紋音・永田砂知子

【会場】座・高円寺2 
杉並区高円寺北2-1-2 TEL: 03-3223-7500 http://za-koenji.jp/ JR中央線高円寺駅北口 徒歩5分

【料金】大人 前売3,700円/当日4,000円/高校生以下1,000円(全席自由)
※当日券は開演1時間前より販売。※高校生以下割引はアートユニットアイプラスのみで取扱。※未就学児のご入場はご遠慮下さい。 

【チケット取扱】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com
■イープラス http://eplus.jp/(PC・携帯)
■ちけっとぽーと TEL: 03-5561-7714(平日10:00〜18:00)http://www.ticketport.co.jp/
渋谷店(SHIBUYA109 2F)池袋店(池袋パルコ6F)銀座店(銀座ファイブ1F)東京店(大丸東京11F)新宿店(伊勢丹会館B1F)吉祥寺店(アトレ吉祥寺B1F)横浜店(横浜駅東口ポルタ)大宮店(ソニックシティホール)

【お問合せ】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com

【スタッフ】
構成・演出:金子あい 音楽:永田砂知子 美術:トクマスヒロミ 照明:横原由祐 音響:黒澤靖博 舞台監督:寅川英司+鴉屋 衣装:細田ひなこ 宣伝美術:aikaneko 協力:永田倶楽部 後援:杉並区 企画・制作: art unit ai+(アートユニットアイプラス)


再婚せよと夫に言われたら…維盛と北の方


平維盛は清盛の嫡男重盛の嫡男です。奥さんの北の方は、巴とか祇王のような濃いキャラとはちがって、ごく普通の武家の主婦で、10歳の跡取り息子六代御前と8歳の娘がいます。ホームドラマのような別れのシーンで、その等身大の描写がかえって胸に迫ります。
自分亡き後、この幼いこども達をどうやって無事に育ててゆけばよいのか、維盛は悩んでいました。平家が滅んだら源氏は草の根分けてもこの六代を探し息の根を止めようとするでしょう。現に、おとっつあんの清盛は死ぬ間際に、頼朝を生かしておいたのが間違いだったと猛烈に悔やんでいたし、頼朝も平家の末裔を一人でも残しておけば後々自分のようになると六代を徹底的に探すことになりますし。

で、彼は奥さんにこう言うのです。自分亡き後は、ともかく再婚せよと。
二人はラブラブだったようです。死んでも一緒にいようね、と誓い合っていたそうですから。北の方は戸惑うばかり。

あらすじです。

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1183年(寿永2年)7月
 平維盛は、日頃から覚悟はしていたものの、いざその時がくると悲しかった。
 維盛の妻、北の方は、故中御門新大納言・藤原成親の娘。成親は鹿ケ谷事件で処刑され、母も他界していた。桃のように美しい顔立ちで、絶世の人と言われていた。六代御前という10歳の若君と、8歳の姫君がいた。
 「自分は、平家一門と共に西国へ落ちて行く。たとえ私が討ち取られたと聞いても、ゆめゆめ出家などしてはならない。どのような人とでも見もし見えて(=結婚して)、幼い子どもたちを育ててくれ」
 しかし、北の方は維盛の袂にすがって「都には父も母もおりません。あなたに捨てられたら誰と結婚するというのですか。それなのに、どのような人とでも見えよ(=結婚せよ)など言われたことが恨めしい。前世からの契りがあったからこそ、あなたは情けをかけてくれましたが、ほかに誰が情けをかけてくれましょう。どこまでも一緒で、同じ野原の露とも消えよう、一つ底の水屑(みずく)にもなろうと小夜の寝覚めに睦言したことは皆、いつわりだったのですか。せめて、わが身一つならどうにかしましょう。捨てられた憂き目をかみ締めても留まりましょう。しかし幼い者たちを、誰に託しどうしろと言うのです。たとえ恨んだとしても、いっしょに連れて行ってください」
 維盛が答えるには「あなたが13歳、われが15歳の時に見初め合い、たとえ火の中、水の底へも、共に入り、共に沈み、死ぬ時も先立ち、遅れることはしないと思い合った。しかし、憂き目に遭わせるのは、わが身ながら耐えがたい。どこかの港ででも落ち着いたら、そこから迎えを出す」。維盛はそう告げ、思い切って立ち上がった。鎧を身に着け、馬を引き寄せ、いざまたがろうとした時、若君と姫君が走り出て、維盛の鎧の袖の草摺(くさずり)に取りつき、泣きついた。
 「父上はどこにおいでになるのですか。われも参ります。われも行きます」
 維盛は、これが無常の世の絆と思い、いよいよ、どうすることもできない様子。
 そこに、維盛の弟の平資盛、清経、有盛、忠房、師盛の兄弟5騎が中庭に入り、馬上から「行幸の行列ははるか先。どうして今まで遅参しているのですか」と声をかけると、維盛は馬に乗り出発した。しかし引き返し、縁側に馬を寄せ、弓で御簾をめくり上げ、「それ見よ。幼い者たちがあまりに慕うので、慰めようとしているうちに思いのほか遅参していたぞ」と泣きながら告げた。中庭に控える兄弟5騎も、鎧の袖を濡らした。
 斎藤五と斎藤六という維盛に使える兄弟は、お供を願い出たが、維盛は2人に都にとどまり六代の世話をするよう頼まれ、涙を抑えて留まった。この兄弟の父は北国で木曾義仲と闘い討ち死にした齋藤別当実盛である。実盛が息子達を残して戦に赴く気持ちが今になって維盛には痛いほど分かる
 北の方は、「ここまでつれない人とは思わなかった」と、うち伏して泣いた。若君、姫君、女房たちは、御簾の外まで転げ出て、声をばかりに泣き叫んだ。
 都落ちの際、平家は、一門の館に火をかけ焼き払った。
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都落ちの時に平家は都中に火を放って焼き払っていってしまったのですね。都の人びとにとってみたらひどい話です。とはいえ、幼い子らが僕も行くと維盛に縋り付くのはもう涙が出ます。辛かっただろうなあ維盛。戦争は矛盾だらけです。

そして、もう一つ、さりげなく齋藤別当実盛親子と維盛親子の二組の別れが描かれているのも、一昨年「実盛」をやったわたしとしてはもうたまらなく切なく感じます。

皆さんはどんな風にお感じになるでしょうか。



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古典の言葉が躍動する!分かる!美しく衝撃的な舞台!
語り:金子あい × 波紋音:永田砂知子
「平家物語」第4回公演

【日時】10月22日(火) 19時開演    


    10月23日(水)14時開演 / 19時開演 ※開場は開演の30分前

【上演演目】祇園精舎、鵼、奈良炎上、維盛都落、能登殿最期 (上演時間80分)

【出演】語り・金子あい、波紋音・永田砂知子

【会場】座・高円寺2 
杉並区高円寺北2-1-2 TEL: 03-3223-7500 http://za-koenji.jp/ JR中央線高円寺駅北口 徒歩5分

【料金】大人 前売3,700円/当日4,000円/高校生以下1,000円(全席自由)
※当日券は開演1時間前より販売。※高校生以下割引はアートユニットアイプラスのみで取扱。※未就学児のご入場はご遠慮下さい。 

【チケット取扱】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com
■イープラス http://eplus.jp/(PC・携帯)
■ちけっとぽーと TEL: 03-5561-7714(平日10:00〜18:00)http://www.ticketport.co.jp/
渋谷店(SHIBUYA109 2F)池袋店(池袋パルコ6F)銀座店(銀座ファイブ1F)東京店(大丸東京11F)新宿店(伊勢丹会館B1F)吉祥寺店(アトレ吉祥寺B1F)横浜店(横浜駅東口ポルタ)大宮店(ソニックシティホール)

【お問合せ】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com

【スタッフ】
構成・演出:金子あい 音楽:永田砂知子 美術:トクマスヒロミ 照明:横原由祐 音響:黒澤靖博 舞台監督:寅川英司+鴉屋 衣装:細田ひなこ 宣伝美術:aikaneko 協力:永田倶楽部 後援:杉並区 企画・制作: art unit ai+(アートユニットアイプラス)

死者4500人以上の大惨事「奈良炎上」

安野光雅「繪本 平家物語」講談社
大好きな安野光雅さんが描いた「繪本 平家物語」はとても美しく大好きな本です。
その表紙が「奈良炎上」で、私は見入ってしまいました。

平家物語の中でも清盛の悪行として特筆すべきものの一つに、
奈良の都を焼き払ってしまった「奈良炎上」があります。
淡々と描かれる東大寺、興福寺の焼滅。
私達の想像を超えた「喪失」だったと思います。

この章段は今回の公演の中でも一番難しく、また見せ場でもあります。

あらすじをみてみましょう。。。

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1180年(治承4年)12月

 以仁王の乱に加わった興福寺を追討するとの噂がたち、怒った僧兵たちは蜂起した。

(摂政の説得にも耳を貸さず、朝廷からの使者に対し「乗り物からひきずりおろせ。もとどり(束ねた頭髪)を切れ」と騒いだ。使者らはほうほうのていで逃げ帰った。また大きな球丁(毬打=ぎっちょう、杖で鞠を打つ遊戯)の球を作り、これを清盛に見立てて踏んだり蹴ったりして気勢を上げている。)

さらに僧兵たちは、事態を沈静化するために非武装で向かった使者、瀬尾太郎兼康の軍勢六十余人を捕まえて、その首を猿沢の池(興福寺の南、旧南大門前の池)の端に並べてさらした。
 激怒した清盛は12月8日、大将軍に重衡を命じ、四万余騎の大軍を南都へ向けた。僧兵たちも老若の区別無く七千余人が甲をかぶり、般若寺と奈良坂に堀を築いてよく戦ったが、馬で駆ける平家の敵ではなかった。ついに夜戦となり、重衡は明かりをとるために民家に火をつけさせた。すると折からの強風にあおられて瞬く間に燃え上がり、奈良の有力寺院は一面火の海と化した。
 老僧や学問僧、女性、子供たちは東大寺大仏殿の二階や興福寺に逃げ込んだが、大仏殿は敵が続くのを恐れてはしごを外したため、千あまりの人々は逃げるすべがないまま猛火が押し寄せた。わめき叫ぶ声は、焦熱、大焦熱、無間地獄の炎の下の罪人の声もこれ以上ではあるまいと思われた。
 藤原氏代々の氏寺である興福寺にあった仏法最初の釈迦の像、自然に現れた観世音、瑠璃を並べた四面の回廊、朱丹を交えた二階建ての楼、九輪が輝いていた二基の塔などがたちまち煙となってしまった。
 東大寺には聖武天皇が磨き立てた金銅造り高さ十六丈の盧遮那仏があった。その満月のような尊い姿も、頭は焼け落ちて地上にあり、身体は溶けて山のようだ。
 八万四千の相があるという仏の容貌は、秋の月が早く五重の雲に隠れるように隠れ、四十一地の仏の装飾品は、夜の空がむなしく十悪の風に漂うように輝きをなくした。煙は天に満ち、炎は虚空に隙間もない。目の当たりにする者は眼を向けられず、遠く伝え聞く人は茫然自失した。
 法相三論の経典は一巻も残らなかった。我が国は言うまでもなく、印度、支那にもこれほどの仏法の滅亡があろうとは思えない。
 焼死した人は三千五百余人、戦死した僧は千人にも及んだ。
 翌日凱旋した重衡を喜んで迎えたのは清盛だけだった。後白河法皇以下、「たとえ悪僧を滅すとしても、寺院を破滅するべきであろうか」と嘆くばかりだった。
 僧兵の首は、当初は大通りを引き回して獄門の木にかける予定だったが、南都が焼失した驚愕に何の指示もない。あちこちの溝や堀に捨て置かれた。
 ひどかった年も暮れ、治承も五年になった。
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この章段を読むことになって、テレビのニュースで悲惨な事故を報じていると、もしあの時代にテレビがあったら、間違いなく中継のヘリが飛び、リポーターが声をからして伝えるだろうと思いました。東日本大震災の惨状も思い起こさずには射られません。淡々としているからこそのおそろしさが伝わるといいなあと思っています。



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古典の言葉が躍動する!分かる!美しく衝撃的な舞台!
語り:金子あい × 波紋音:永田砂知子
「平家物語」第4回公演

【日時】10月22日(火) 19時開演
    10月23日(水)14時開演 / 19時開演 ※開場は開演の30分前
【上演演目】祇園精舎、鵼、奈良炎上、維盛都落、能登殿最期 (上演時間80分)

【出演】語り・金子あい、波紋音・永田砂知子

【会場】座・高円寺2 
杉並区高円寺北2-1-2 TEL: 03-3223-7500 http://za-koenji.jp/ JR中央線高円寺駅北口 徒歩5分

【料金】大人 前売3,700円/当日4,000円/高校生以下1,000円(全席自由)
※当日券は開演1時間前より販売。※高校生以下割引はアートユニットアイプラスのみで取扱。※未就学児のご入場はご遠慮下さい。 

【チケット取扱】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com
■イープラス http://eplus.jp/(PC・携帯)
■ちけっとぽーと TEL: 03-5561-7714(平日10:00〜18:00)http://www.ticketport.co.jp/
渋谷店(SHIBUYA109 2F)池袋店(池袋パルコ6F)銀座店(銀座ファイブ1F)東京店(大丸東京11F)新宿店(伊勢丹会館B1F)吉祥寺店(アトレ吉祥寺B1F)横浜店(横浜駅東口ポルタ)大宮店(ソニックシティホール)

【お問合せ】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com

【スタッフ】
構成・演出:金子あい 音楽:永田砂知子 美術:トクマスヒロミ 照明:横原由祐 音響:黒澤靖博 舞台監督:寅川英司+鴉屋 衣装:細田ひなこ 宣伝美術:aikaneko 協力:永田倶楽部 後援:杉並区 企画・制作: art unit ai+(アートユニットアイプラス)

「鵺」の鳴く夜は恐ろしい?!


鵺(歌川国芳 画、江戸時代)
なかなか更新できなくてすみません〜。
ブログ書くのも結構時間がかかるものですから、それより先に、作品づくりでしょっ!とみんなからも無言のプレッシャー!!やっとめどが立ちましたので、今回の公演で上演する章段のあらすじを順にご紹介していきますっ!軽〜くご鑑賞の参考になれば。

深い考察は既にいろいろな方がなさっていらっしゃるのでそちらに譲るとして、公演直前のざっくりしたあらすじ解説です。ご了承くださいませ。


まずは「鵼」です。


八重の桜で鵺という言葉が出てきたそうで、一般の方にも最近少し有名になった「鵺」。能をご覧になる方は「鵺」はもうよくご存じですよね。

「平家物語」に登場する頼政はものすご〜くおおざっぱに言うと、長年一生懸命仕事をしてきたのに、なかなか思うように出世もせず、でも最後はしっかり従三位になり、執念深くて世渡り上手なところもあり、しかし一番の手柄が化け物退治というおじさんです。柱の陰から出世をうらやましがる様な歌を作ってみたり、化け物退治で褒められれば、いやぁ、それほどでも〜と謙遜してみたり。息子の馬を宗盛が欲しがってひどい仕打ちをしたことにものすごく怒り、やっと老後も安心という時に高倉宮をそそのかして謀反を起こしたりして。源氏でありながら平家方で働き、武人であり歌人でもあるこの人はいったいなんなのか。私はとても気になります。はい。もちろんわたくしがこの頼政さんになって語ります〜。

あらすじを見てみましょう


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 源頼政は長く大内守護だったが、昇殿は許されず、年老いてから述懐の和歌「人知れず大内山のやまもりは木がくれてのみ月をみるかな(大内山の番人が木陰に隠れて人知れず物陰から月を見るように、大内守護の私は人知れず物陰から帝を拝することだ)」を詠み、それによってようやく昇殿が許された。
 なおも昇進を心にかけ、詠んだ歌「のぼるべきたよりなき身は木のもとに椎(四位)を拾ひて世をわたるかな(木の上に上るべき便宜の無い我が身は、やむを得ず木の下に落ちこぼれた椎の実を拾って〈やっと四位になって〉世を過ごすことだ)」により三位に叙された。
 仁平のころ、東三条の森から夜な夜な黒い雲がわきだして、御殿の上を覆い、近衛天皇が怯えた。かつて堀河天皇に同様の発作があり、その病魔を退散させたのが源義家だったことから、その先例に従って武士に命じるべきとして、源頼政が選ばれた。
 頼政は頼りにしている郎等、井早太のみを連れ、矢を2本持って参内。もし1本目の矢で射損ねた場合は、もう一本の矢で自分を推薦した忌々しい左小弁の雅頼卿(←名前が紛らわしい!)の首の骨を射ようというつもりだった。午前2時頃になると東三条の森の方から黒雲が一群やってきて、御殿の上にたなびいた。頼政がきっと見上げると雲の中に怪しい物の姿がある。「南無八幡大菩薩」と心の中で祈りながら弓矢を射ると、手応えがある。落ちてきたのは「頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、鳴く声は鵺(とらつぐみ)」に似ていた。天皇は感心のあまり獅子王という剣を下された。取り次ぐことになった宇治の左大臣が、ホトトギスの鳴き声を聞きながら「ホトトギスが名をも雲間にあげるように、そなたも武名を宮中にあげたことだなあ」と言うと、頼政は月を横目に見ながら「弓を射るのに任せて、まぐれで射当てました」と詠み、御剣を受け取って退出した。「弓矢を取って並ぶ者がないだけでなく、歌道も優れていた」と君も臣も感心した。
 さらに応保のころ、鵺という怪鳥が鳴いて二条天皇を悩ますことがあり、頼政が召された。闇の中でたった一声鳴いた鵺の声の方に、頼政は大鏑の矢を射上げた。鵺はその音に驚いて「ひひ」と声を上げた。頼政は二の矢で射抜いた。宮中はどよめき、帝の感心もなみなみならず、御衣を与えた。取り次ぎの右大臣公能公が頼政の肩にかけようとして「五月闇の真っ暗な中、今夜武名を現したことだな」と言いかけたところ、頼政は「誰とも分からないたそがれ時も過ぎたと思うのに、そんな時に名を現したことですよ」と詠み、退出した。
 その後、伊豆の国を頂戴し、子息仲綱を国司にし、我が身は三位になって、丹波の五ヶ庄、若狭の東宮河を所領としてそのまま過ごすはずだったが、無益な謀反を起こして高倉宮(以仁王)も失い、自分自身も滅びたのは情けないことだった。
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なんだかどこかとぼけていますよねえ。どの歌も。冴えてるんだか冴えてないんだか。


鵺はトラツグミの声に似た大変に気味の悪い声で鳴き、凶鳥とされていたそうですが、永田さんとトラツグミの声をYouTubeで聴いたら、結構可愛い声だったので拍子抜けしてしまいましたが、昔の人にはどんな感じで聞こえていたのでしょうか。


この章段では、頼政の退治は2回描かれています。一度目は鵺ではなく、「鳴く声が鵺のような怪物」で、二度目は「鵺」だと書いてあります。ほとんど同じような話なので、いろいろ語られているうちにまとめられちゃったのかなあ、という感じもします。夜な夜な天皇を病気にさせた原因はなんだったのでしょうね。現代の科学や医学なら原因を追求して病名をつけるのかもしれませんが、当時は怨霊や化け物のせいにされました。私達は作品を作る過程で、今は都会ではほとんど想像もつかないくらいの夜の闇を考えました。美術のトクマスさんは「今回のセットは闇!闇!」と言い放ち、照明の横原くんは「あいさん、これは怪奇現象ですか?精神的なものですか?」とか矢継ぎ早に尋問され、永田さんは「トラツグミの声ですか〜〜かわいいですねえ〜」いえ、コレかわいくないですから!という具合でどうなりますでしょうか。とてもお芝居っぽい章段だと思います。

冒頭の八重さんのように、得体の知れない化け物の意が転じて、得体の知れない人物を鵺いうようになったそうですが、実は頼政自身が得体の知れない人だったのかもしれません。能の「鵺」もそうした解釈で大変に面白い作品です。ググると頼政に関してはたくさん記事が出てきますので、ご存じない方は調べてみてはいかがでしょうか。

当日券もございますので、ぜひ劇場に観にいらして下さい!



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古典の言葉が躍動する!分かる!美しく衝撃的な舞台!
語り:金子あい × 波紋音:永田砂知子
「平家物語」第4回公演

【日時】10月22日(火) 19時開演
    10月23日(水)14時開演 / 19時開演 ※開場は開演の30分前

【上演演目】祇園精舎、鵼、奈良炎上、維盛都落、能登殿最期 (上演時間80分)

【出演】語り・金子あい、波紋音・永田砂知子

【会場】座・高円寺2 
杉並区高円寺北2-1-2 TEL: 03-3223-7500 http://za-koenji.jp/ JR中央線高円寺駅北口 徒歩5分

【料金】大人 前売3,700円/当日4,000円/高校生以下1,000円(全席自由)

※当日券は開演1時間前より販売。※高校生以下割引はアートユニットアイプラスのみで取扱。※未就学児のご入場はご遠慮下さい。 

【チケット取扱】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com
■イープラス http://eplus.jp/(PC・携帯)
■ちけっとぽーと TEL: 03-5561-7714(平日10:00〜18:00)http://www.ticketport.co.jp/
渋谷店(SHIBUYA109 2F)池袋店(池袋パルコ6F)銀座店(銀座ファイブ1F)東京店(大丸東京11F)新宿店(伊勢丹会館B1F)吉祥寺店(アトレ吉祥寺B1F)横浜店(横浜駅東口ポルタ)大宮店(ソニックシティホール)

【お問合せ】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com

【スタッフ】
構成・演出:金子あい 音楽:永田砂知子 美術:トクマスヒロミ 照明:横原由祐 音響:黒澤靖博 舞台監督:寅川英司+鴉屋 衣装:細田ひなこ 宣伝美術:aikaneko 協力:永田倶楽部 後援:杉並区 企画・制作: art unit ai+(アートユニットアイプラス)


2013年10月8日火曜日

祇園精舎

「祇園精舎」 平家物語2012@座・高円寺2


祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

誰もが知っている「祇園精舎」冒頭。
教科書で必ず一度は読みましたよね〜。懐かしいですね〜。
語呂がよく美しいこの文章を暗記した(させられた)方も多いと思います。

これは2つの仏教伝説に基づいて語られているんです。
一つは、その昔インドにあった釈尊の僧院、祇園精舎には病僧を収容する無常堂と呼ぶお堂がありました。病僧が臨終となりいよいよ息を引き取ろうとする時、この無常堂の四隅にかけてあった鐘が自然と鳴り始め「諸行無常」の道理を説く経文を語ります。この「鐘の声」を聞くと病僧は心も清らかになりめでたく往生を遂げた、というもので、もう一つは、釈尊がこの世に別れを告げた時、横たわっていた床の四隅に立つ娑羅の木々が緑の葉を真っ白に変じて、まるで鶴の羽のように釈尊の上を覆った(永積安明『平家物語を読む』より)、というものです。こちらは涅槃絵などでご覧になったことがあると思います。

語られた当時、この説話は広く伝承されていたと思われ、私達よりもはるかにはっきりとしたイメージをもって聞いていたのではないでしょうか。(意味を知らなくても美しいですが、意味を知るといっそう時空を超えた響きとなって聞こえてきますよね。ガンダ〜ラが聞こえてきそう♪)病僧も釈尊も盛者も必ず衰え滅びる…これが道理であり人の世の法則であると確認しているのです。

そして、この続きに書かれていることは…

…外国の例を探してみると、秦の趙高や唐の安禄山など、これらはみな旧主先皇の政治にも従わず、楽しみを極め、人の諫言も聞き入れることもなく、天下の乱れることを悟らずして、民衆の嘆き憂いを顧みなかったので、末永く栄華を続けること無しに滅びてしまった者どもである。近く我が国にその例を探してみると、承平の将門、天慶の純友、康和の義親、平治の信頼、これらは皆驕れる心も猛悪なこともそれぞれに甚だしかったが間もなく滅びてしまった。ごく最近では六波羅の入道、前太政大臣平朝臣清盛公と申した人の驕り高ぶり横暴な有様は言葉で言い表せないほどである…

「平家物語」には1000人近い人びとが登場し、身分の上下を問わず、一人一人が己の運命を全力で生き通していく姿が力強く描かれるとともに、末法の世に世界が地獄と化していく有様が描かれています。あらゆる人がその運命に巻き込まれることを免れない。世界を包んだ大地獄の原因は何であったか。それは、時の為政者の並外れた「煩悩」「我執」が原因だったと…。(梅原猛「地獄の思想」より)

私は、平家物語の最初の章段「祇園精舎」を、むしろ、今の世に問いかけたいと思っています。
皆さんはどう感じられるでしょうか。


今回は前回とはすこし変えてみようと永田さんと話しています。どうなりますか。


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古典の言葉が躍動する!分かる!美しく衝撃的な舞台!
語り:金子あい × 波紋音:永田砂知子
「平家物語」第4回公演

【日時】10月22日(火) 19時開演
10月23日(水)14時開演 / 19時開演 ※開場は開演の30分前

【上演演目】祇園精舎、鵼、奈良炎上、維盛都落、能登殿最期

【出演】語り・金子あい、波紋音・永田砂知子

【会場】座・高円寺2 
杉並区高円寺北2-1-2 TEL: 03-3223-7500 http://za-koenji.jp/ JR中央線高円寺駅北口 徒歩5分

【料金】大人 前売3,700円/当日4,000円/高校生以下1,000円
(全席自由)※当日券は開演1時間前より販売。
※高校生以下割引はアートユニットアイプラスのみで取扱。
※未就学児のご入場はご遠慮下さい。 

【チケット取扱】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )
TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com
■イープラス http://eplus.jp/(PC・携帯)
■ちけっとぽーと 
TEL: 03-5561-7714(平日10:00〜18:00)
http://www.ticketport.co.jp/
渋谷店(SHIBUYA109 2F)池袋店(池袋パルコ6F)
銀座店(銀座ファイブ1F)東京店(大丸東京11F)
新宿店(伊勢丹会館B1F)吉祥寺店(アトレ吉祥寺B1F)
横浜店(横浜駅東口ポルタ)大宮店(ソニックシティホール)

【お問合せ】
■art unit ai+(アートユニットアイプラス )
TEL: 090-6707-1253 E-mail:auaplus@gmail.com

【スタッフ】
構成・演出:金子あい 音楽:永田砂知子 美術:トクマスヒロミ 照明:横原由祐 音響:黒澤靖博 舞台監督:寅川英司+鴉屋 衣装:細田ひなこ 宣伝美術:aikaneko 協力:永田倶楽部 後援:杉並区 企画・制作: art unit ai+(アートユニットアイプラス)